この季節のお楽しみと言えば、金木犀の香りがあります。

1年に1回、ふわっと秋の訪れを教えてくれる、甘い香り。

この香りを嗅ぐと「あぁ、今年も秋がやってきたんだな」という気持ちになります。
秋が好きな私としては、ふとした時の風の冷たさも相まって、
季節の移り変わりを嬉しく思います。

もうひとつ。
金木犀の香りを嗅ぐと、思い出すものがあります。

山田詠美さんの『放課後の音符(キーノート)』

女子校生を主人公とした、短編の物語集。

この中に、年上の女性に彼氏をとられた女の子の話があるんです。

「なによ、あんなおばさん!私の方がいいじゃない!!」と散々文句を言っている。

だけど、金木犀の下でデートをしている元カレとその年上の女性との会話を聞いて
元カレと年上の女性の空気を見て、彼女は何かに気付くのです。

「私もあんな女性になりたい!」と大人びた口紅に手を出す少女の唇は
とても良い形をしていたそうな。

私がこの本を手に取ったのもちょうど女子高生で、恋だのお化粧だのに
心を奪われていたお年頃でした。

残念ながら、そういう甘い体験とは無縁の学生時代でしたので
小説の中だけの憧れ、で終わってしまいましたが
今でも金木犀の香りを嗅ぐと、その小説を思い出して読み返したくなります。

当時は、その年上の女性のようになりたいと思った少女の無垢さ、に自分を重ねていましたが
その年上の女性の設定年齢よりも年を重ねた今となっては、
女子高生だったあの頃、思い描いていた大人の女性になれただろうか?と
また違った視点で小説を楽しんでいます。

今年の金木犀は香りが去るのが早いように思います。

年に1度のお楽しみ。

また、来年。
金木犀の香りを嗅ぐ頃には、何をしているのでしょうか。
憧れの大人の女性に、少しは近づいていられたらいいな。